水道工事戦記

今日は長い上にただの私事です。

あらかじめご了承下さい。

水道工事が終わり、普通に蛇口をひねれば水が出る生活が戻ってきた。

いや、今までも蛇口をひねれば水は出ていたのだけれど、確認不可能な領域で水漏れが起きていたため、その代償は水道料金28000円（最大値）という地獄だった。

それで水道の元栓を締め、どうしても必要な時だけ元栓を開ける、開けている隙に桶や鍋やボトルに溜められるだけ水を溜め、後はその汲み置きを使う、という不便な暮らしをしていた。

やってみると分かるが、なかなか不便である。

生活の中でちょいちょいと手を洗う機会は多い。

勿論、トイレにも行かないといけない。

食器や調理器具を洗うのもいちいち一手間なので、水が出ないというだけのことで何もかもが最小の動きになってしまう。

なるべく外出してトイレは外で済ませる。

元栓を締めても、開ければタンクに水は充填される。

うちにはアトリエを含めてトイレが３つ（！）ある。

だからまあ何とかやりくりは出来た。

その間、2週間ほど。

外出先とかたまたま見たYouTubeの動画なんかで蛇口を捻るといともたやすく水が出るのを見ると、「すごい」と思ったものだった。

顔を洗うのも汲み置きでやってみると、結構な新体験になるものです。

しかし昔は皆こうやっていた。

改めて、水は生活の要である。

この家は複雑な作りをしている。

全然褒めていない。

混乱しているのである。

水道工事、電話線工事、エアコン取付工事、塗装工事、職人が入るたびに「…ん？どうなってるんだ、これ」と誰もかれもが呟き、「難しい」と。

教訓として、難しい人は難しい家を建てる。

そして難しい人は難しい家に引っ越す。

それが私の一家だったのである。

家屋も混乱しているが、家族も非常に混乱しているので、これを正していかねばならない。

長い道のりはまだまだ終わりそうもない…

今回も難しかった。

それで家の内外に止むを得ず露出配管が通るようになり、そうでない所は壁と天井に穴を開けて中を通すことになった。

見積書を見ると、穴開け（と穴塞ぎ）作業で11万円かかる。

「自分でやっていいですか？」とお尋ねした。

「え」と戸惑っておられたけれど、「自分で責任は取ります。穴を開けて塞いだ経験はあるので」と。

それで天井に４５ｃｍ四方の穴を４つ、壁に６０ｃｍ四方の穴を１つ、自分で開けた。

天井作業は大変である。

しかし上手く出来た。

開けるのも大変だが、塞ぐのも大変。

しかしこれも上手く出来た。

自分で壁に穴を開けて塞ぎたい人は、おじじに相談して下さい。

壁及び天井の穴開けなのだけれど、壁材は通常、石膏ボードで出来ている。

石膏ボードは釘が掛からないくらい脆いので、カッターでまず切れ込みを入れ、鋸で引けば簡単に切り開ける。

ただ石膏ボードの向こうにだいたい垂木（2㎝から5㎝くらいの角材）が渡してあるので、これに当たると、天井作業は大変。

体重をかけることが出来ないから。

そして落ちてくる有害な粉塵を被りながら作業しないといけない。

マスク必須。

水道工事が無事終わって職人が帰った後、穴だらけの空間が残された。

配管が露出したことで家の中は一部、結構様子が変わってしまったし、大きな穴も開いている。

なんか寂しい。悲しい。

さっさと終わらせるべく、すぐに作業に着手する。

当たり前だけれど四角く切ったものを壁の穴に戻すなら話は簡単だけれど、天井に戻せばすぐに落下する。

こういう時に知恵を働かせる。

天井に画鋲を何本か刺し、そのヘリに引っ掛けて落下を防ぐ。

そして画鋲のない部分から珪藻土を塗り込んでいく。

画鋲は上手く使うとかなり強力な補強材になるのです。

今回、穴塞ぎ作業を珪藻土でやることは最初から決めていた。

それ以外の方法となるとコーキングかと思うのだけれど、珪藻土の方が勿論見た目が良い。

それと、これは工事費を安くするために発案したものではあるけれど、美観上も正解だった。

「点検口」というのがきっと皆さんの家にもあるでしょう。

壁や天井に仕込んである、謎の四角形の枠です。

いざと言う時、これを開いて天井裏や壁の中を見ることが出来るようになっている。

便利だけれど、こんなものが一部屋に3つも4つもあったら落ち着かない。

その点、珪藻土だったら、何事もなかったかのように元に戻すことが出来るから、これを思いついて本当に良かった。

珪藻土も、天井に塗るのはなかなか大変だけれど、もうここまで来れば大した作業ではない。

肉体労働する時はパワフルな音楽があると良い。

それでベートーヴェンの交響曲を聴きながらやっていた。

2番4番がとても良い。

唯一の懸念は、これで補強材の画鋲を外した時どうなるか…だったけれど、翌朝、崩落していなかった。

一安心。

かくして我が家では再び、普通に水が出る。

水漏れすることなく。

そしてこれからは普通の料金で水を使える。

数年に跨る長い長い水問題が解決した。

全てを振り返って私は敢えてこう言いましょう。

「うち、蛇口を捻ると水が出るんですよ。凄くないですか？」と。

長々と、お付き合いありがとうございました。

明日からはまた体と心の、役に立つお話をお送りします。