2020/07/04

読書日記#3『新約聖書を知っていますか』阿刀田高

阿刀田さんの『知っていますか』シリーズ。新潮社。

『旧約を~』も素晴らしかったですが、
この『新約聖書を知っていますか』は超が付く傑作でした。

イエスって何者だったのか?
興味のある人には是非一読をお勧めします。

この本を読むと非常に親身に
イエスという個人について感じることが出来ます。

このシリーズに関して阿刀田さんの基本姿勢は
「信仰のない私が信仰のない皆さんのために、
読んだ方が良さそうだけど読む気がしないご立派そうな本を要約する」
というもので、
そのゆるく、どこまでも楽しさを織り交ぜる姿勢は
最近YouTubeで見かける良質な歴史系解説動画の先駆のように思えます。

真面目腐ったのも嫌ですが…
こと宗教や芸術となると、
要約系って僕は好きではないのです。
「粗筋で分かる世界文学」
「ハイライトだけ聴くクラシック」とか見ると
「この馬鹿者!」と言いたくなってしまうのですが、
阿刀田さんの「粗筋」はレベルが違った。

何が素晴らしいのかと言うと…

阿刀田さんは信仰を持たないし、霊的現象も神も天啓も信じない。

であるがゆえに、対象にのめり込んでいかないんですよね。
自分事じゃないから。
のめり込まないから説得しないんです。
「ね!ね!やっぱり神はいるんですよ!」
みたいな。

そしてのめり込んでいかないからこそ、無用に批判的にもならない。

これが凄く重要で、
無用に批判的な人は実は信じすぎちゃっているんですよね。
本当に中立的な人は、見ている世界の「違い」をそのままにしておける。
(*心のお話会でも頻出する話題ですね。)

例えば阿刀田さんは「イエス=神の子」という、
信じる者なら当たり前に信じるこの等式を、実感として信じられない。

信じられないのだからしょうがない。
しかしそれを「そんなもんあり得ない」と拒絶するのではなく、

「そこまで言い切れちゃうんならそうなんだろうなあ。
少なくとも信じる人たちにとっては事実だったんだろう。
その点が重要だ」

みたいな距離をあくまで保つんですよね。
この懐の深さが好き。

同時に
「でも僕はやっぱり信じられない、
ひょっとして事実はこれこれだったんじゃないかなあ」
と時には下世話に、時にはフレンドリーに呟く。

熱烈な信者には冒涜でしょうが、
それ以外の人にとっては
「それも面白いな」
「そっちの方が確かに自然だ」
と素直に思える。

かなりゆるく、楽しく読める本です。
しかし阿刀田さんの目の付け所は常に鋭く、
自力では原典を10回読んでも気付かなそうなことに注意を向けてくれるので
知的刺激に満ちていますし、本当に知識が身になる。

しかし何より感動的だったのは…

「自分は信仰を持たない」と繰り返し述べられる阿刀田さんが
最後の方、特にゲッセマネ辺りからこれ以上ない程の深い共感や理解や
憧れとさえ言えるであろう心をイエスに寄せていること。
それは信仰という夾雑物を挟まなかったことによってこそ、
逆に成し得た個人的な心の軌跡、等身大の体験の表白だと思いました。

最終的にこの本は「新訳聖書の要約」という役目を飛び越えて
阿刀田さんの「個人的信仰告白」に至っていると思います。

久しぶりに、読み終えた時に深い感謝と感動が湧き起こってくる、そんな本でした。(読了7月1日)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
本日14時。『遺書』の勉強会(ご購入者無料)
明日7月5日(日)は山羊座満月&半影月蝕ヒーリング(5000円)。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ご連絡は
LINE:atelierkoshiki
microcosmo.healing@gmail.com

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