無意識の力

無意識というものは、「私」が知らないことを知っている。

と言っても、全知とか千里眼、という程ではない。

何もかも分かるのではなく、最低限、自分の未来を知り、それに備えることが出来るのだ。

ただし、私たちは多くの場合、自分たちの決心や選択が無意識によって為されたことを知らない。

注意深く観察すると、例えば人はその死が近付く頃にはそれに向けて事前に準備している。

それは「私」＝表層意識がその死を自覚しているかどうかと関係ない。

表層意識の力は弱くぎこちないが、無意識の力は自然でとても大きい。

モーツァルトを例に取ると、死が近付くにつれて明らかに作品が別次元に深化している。

これは無意識が為したことだ。

表層意識が「私はいずれ死ぬから死に備えて、それ相応の曲を書こう」などと言っても、多分もったいぶった、良くない感じに重い曲しか出来ない。

そういうものである。

いきなり話は卑近に寄せるが、私がお客様に料理を作る時も同様で、無意識に任せる。

「あの人はこういう体質で、こういう状態だから、それを補うために」みたいなことを栄養士のように頭で考えることはしない。

そもそも、そういうことに余り詳しくないし。

ただ思いつくまま、その人のイメージの周りに集まる食べ物のイメージを料理によって実体化していくのである。

すると、それを食べた人は必ず「こういうものがほしかった！」と分かる。

無意識のやることに間違いはない、と言えば言いすぎかもしれないが、でも打率はとても高い。

頭で考えたことの命中率の低さに比べたら雲泥の差である。

また別の話だが、私が筋トレに励む理由もまた、やはり無意識が未来に備えているからだと思う。

子供はまだ３歳で、１０歳くらいまでは父親相手に体を使って遊びたいこともあるだろうが、その頃私は５０歳になっている。

その年になってもサッカーをしたりかけっこしたり木登りしたりするのに充分な筋力と柔軟性が私には必要である。

繰り返すが、頭でそう考えているのではなく、無意識が未来に備えて計画していることだから、筋トレの日課もサボったりすることはない。

ここが重要な所で、無意識から立ち起こってくる活動は面倒臭さとか言い訳とか理由付けというものを跳ね飛ばし、あたかもそれ自体が独自の生き物のように働くのである。

だから「筋トレしないと」ではなくて「筋トレしよう」と、当たり前にそう思う訳である。

頭で考えただけのことはどこかで力尽きるが、無意識を源とする活動は、その目標を無意識が下ろすまで決して枯れない。

皆様も、自分が今していることやしようとしていることは、無意識からの訴えなのか、それとも頭でこしらえたことなのか、何となくでも感じようとしてみると良いかと思う。

正解は一つではないし、また頭でこしらえたことをやってはいけないということでもない。

ただ無意識からのエネルギーを感じようとしながら生きていると、次第にやること為すことに深みが増していく。

無意識を原動力にする人は、強い。

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1月22日（日）水瓶座新月

2月6日（月）獅子座満月

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